合同会社サンシャイン・ラボ 代表の松原です。
前回のブログで実測の話をしました。
今日はそのデータの中から見えてくる暮らしの様子についてお話ししたいと思います。
実測建物について
現在実測している「Sukura3」は、入政建築の新野社長の自宅兼モデルハウスです。
所在地:静岡県浜松市中央区大久保町
構造/階数:木造在来軸組工法/2階建
Sukura3 床面積:114㎡(ソーラー有)
Aisu room 床面積:36㎡(ソーラー無)
Sukura3は、南向き・4寸勾配屋根にびおソーラー集熱パネル4枚設置
Aisu roomは、打合せやイベントのための部屋でソーラー対象外
秋頃(10~12月)の様子
2023年10月末の3日間の計測データです。実際は連続してデータ収集していますが、その中の天気の良い日、悪い日、中間日をピックアップしてグラフにしました。
10月末頃の浜松の気温は、日中は25℃前後、夜間(朝方)は10℃くらいまで下がっています。昼間は暖かいですが朝晩は少し寒いと感じるようになってきました。
このような気温の中でSukura3の室温は、23℃~28℃くらいで緩やかに変化していました。重要なのは気温が最も下がる朝方(5時~7時頃)に室温がどれくらい保持できているか?という事です。それは前日の昼間に集めた太陽熱と建物の断熱性能によって得られるものなので、どんなに集熱しても建物に保温力がなければ、その時間まで室温を保つことができません。
上のグラフだと10/30 AM6時の外気温は11℃。その時のSukura3の室温は25℃、Aisu roomは20℃でした。
まだ本格的に暖房が必要な時期ではないですが、朝晩が少し冷や冷やしてきたかなと感じる頃から集熱空気を床下に送って蓄熱させるようにしていきます。真冬に向けた準備をこれくらいから始めていくのですが、そうすると30日の昼間のように室温が30℃近くまで上がってしまう事もあるでしょう。こういう時は窓を開けて調整して下さい。
11月中旬の様子です。日中の最高気温はまだ20℃前後ありますが、最低気温は6℃くらいまで下がってきました。Sukura3の室温は20~26℃くらいで推移していますが、朝方に暖房を使用している事がわかります。エアコンをタイマーで運転させているのでしょう。毎朝同じ時間に室温の上昇がみられます。「室温が20℃あったらうちよりずっと暖かいのに」と思う人もいるでしょうが、頭で感じる温度と肌が感じる温度でズレがあって、この家の住人にとっては「20℃」が暖房開始の目安なのかもしれません。朝少しだけエアコンで室温を上げていますが、8時過ぎくらいから太陽熱が入って来て、室温が緩やかに上昇しているので、日中から夜にかけての時間でエアコンは使われていません。Aisu roomの方は相変わらずSukura3より5℃ほど低く推移しています。
12月の冬至前後の様子です。最高気温は10℃前後、最低気温はマイナスになる日もあります。この頃はソーラーとエアコンによる暖房が行われているようです。そして日没後は薪ストーブに火を入れたのでしょう。室内循環運転により1階と上階の温度差が平準化されていることがわかります。
ソーラーも頑張っているのですが、太陽高度が最も低くなるこの時期は、なかなか集熱温度が上がってくれません。
2024年正月のデータです。
今年の浜松の正月は1日、2日は良い天気で、3日に崩れました。
この3日間は、留守にされていたとの事で生活熱のない建物の素の温度が記録されています。ソーラーの有無による差温は5~8℃くらいありました。3日の夜に帰宅されたようで、暖房が使用された事がわかります。
味変はあってもいいけど…
グラフとか数値が並んだ表を見せられると拒否したくなる人は多いでしょう。かく言う私も数字は苦手です。
でも今回ご紹介したグラフを見ていると単なる室温の記録だけではなくて、そこに住まう人の生活や行動を読み取る事ができます。のぞき趣味ではありませんが、前述のように「この人はこれくらいの温度で暖房を使うんだ」といった事がわかる。料理で例えるならば、出された料理に醤油やソースをかけて自分好みの味にするようなものでしょうか。「この味付けだとソースをかけたくなるよね」って感じですが、それを否定はできないです。ただ作り手側からするとまずは素材本来の味を十分に味わって欲しいという思いはありますから、いきなりソースをドバドバかけられたらガッカリ。そういう扱いを受けない建築をつくらないといけないと思うのです。
例えが分かり難いかな? この続きはまた今度。