青トラ訪問記-4 どこから漏れてる?

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合同会社サンシャイン・ラボ 代表の松原です。

ヒノム研究員がブログで書いていたように甲府の雨漏りは、水上側の隙間を塞げば解決するような単純なものではありませんでした。こことは違う別の浸入箇所があるという事なので、その位置を特定する必要があります。

塩島邸

こういう場合、大抵は「集熱パネル自身からの漏水」が疑われる事になります。集熱パネル断面上の防水ラインは下図の赤線の位置になります。

集熱パネルの防水ライン

例えば集熱ガラス下に水が入ってしまうと「これが雨漏りの原因だ」と言われてしまうのですが、集熱ガラスには防水の役割は持たせていません。集熱ガラスは、外風による集熱温度の低下を防ぐ為のものであって、万一破損した場合でも漏水など屋根の機能に支障が出ないような構造になっています。集熱ガラスの内側では時々結露が発生しますが、ガラスを支える枠に通気と排水のための出入口が設けてあるので、多少時間はかかりますがいずれは解消されます。次にパネル連結部から左右への水の広がりについては、♂♀構造になっている連結部奥の気密・水密シール材によって雨水を食い止める事になっています。また部品同士の接合部に生じる隙間をしっかりシールしながら組み立ててもらう事で、雨水が内部に伝わらないようにしています。

このように設計上は、パネル自身が屋根の機能を果たすような構造にしているのですが、100%大丈夫かと問われれば、人が手作りしているような製品なので、人的ミスが発生する可能性はあります。だから現場を訪問して製品の問題か、施工の問題か状況を確認しつつ、どちらであっても早期に解決できるように現場に協力するようにしているのです。

漏水箇所を探す

漏水箇所の探し方ですが、私は消去法でやっています。まずは疑わしいと思われる部分を養生テープで全てシールし、屋根上で散水して漏水しないことを確認します。大体10~15分くらい試験箇所全体に万遍なく散水。実際の雨を人の手で再現することは難しいですが、圧力変化を与えるような強弱のある水の掛け方をします。

この状態で漏水が無ければ、次に水下側のパネルと屋根の取り合い部のテープを剥がして散水。パネル水下側の水切り部分からの雨水浸入の有無を確認します。

次に集熱ガラスとガラス押えアンクルとの隙間について確認します。工務店担当者が最も懸念していた部分ですが、どんな結果になることやら?

集熱ガラスとガラス押えアングルの接合部には、上の写真のように水が溜まりましたが、パネル内に浸み込んで行くような状況は確認されませんでしたし、この時点でまだ漏水は発生していません。

次にパネル連結部に散水します。
ここではパネル接合部から内部への浸水の有無を確認しましたが、特に異常は見られませんでした。

最後に集熱パネル水上部と棟包みとの間のテープを除去して散水しました。散水開始から5分足らずで漏水を確認。軒先の屋根通気口および外壁通気層の土台水切り部分に水が滲み出してきました。雨水浸入の入口は水上側止水板とパネル、棟包みとの取り合い部分にある事が特定でき、下図のAあるいはBからパネル裏面に浸水しているようです。

Aルートについては、水上側止水板を両面ブチルテープとビスの併用で固定していますが、棟包みによって引っ張られるような事があるとガラス押えアングルとの間に隙間が生じる可能性があります。また冬季に設置した場合は両面テープの接着強度が低くなっていた可能性もあるでしょう。ここに水道が出来て雨水がパネル裏面に回った可能性は考えられますが、今年から水上側止水板の仕様を変更して、この部分の隙間をカバー出来るようになりました。
2024年仕様の水上側止水板は↓の通りです。

下ばかり見るな!上を見ろ!!

「青トラ訪問記-3」で、昨年から今年にかけて原因不明の漏水に悩まされたという事を書きました。その物件においてはパネルと取り合う部分を徹底的にシールし「これで完璧だ!」と思っても次に雨が降るとまた漏れる・・・ これを何度も繰り返して「一体何が悪いんだ」と施工者、設計者と一緒に悩みまくりました。上から眺めた時に見える部品と部品の接合部は全てシールしてありましたが、水上側止水板と棟包みとの取り合い部分に集中的に水をかけた際にBルートから浸入している可能性を確認しました。つまり集熱ガラスやガラス押えアングルに当たった雨水が跳ね返って、止水板と棟包みの隙間からパネル裏面に浸入したという事です。このような状態を裏付けるような事例が過去にもあったので紹介します。

写真の物件では水上側止水板の上に棟包みの下地として木材を打ち、防水紙で覆った上から金属製棟包みを取付けていました。一般には「これで雨漏りなどするはずはない」という納まりになっていましたが、散水試験をしたところ室内側に漏水。棟包みを取り外し、下地の木材を順番に取り外していったところ、水上側止水板と棟包み下地の木材との隙間から雨水が浸入していることがわかりました。どうしても見下ろした時に見える隙間を注視してしまうのですが、跳ね返った水の影響という事も考慮する必要があるという事を認識しました。

止水対策

今回の調査では、およそこの辺りから雨水が浸入しているという事がわかっただけで、Aルートからなのか、Bルートからなのかは、はっきりしていませんでした。
後日、工務店さんがAルートの入口部分をシールしたところ雨漏りしなくなったとの報告を受けたので、ここに問題があったという事でしょう。長年のトラブルにやっと決着をつけることができたようで良かったです。