合同会社サンシャイン・ラボ 代表の松原です。
ヒノム研究員が報告しているように和歌山県那智勝浦町まで行ってきました。ナビでは片道5時間となってましたが、何せ移動手段が青トラなので、スピードは出ないし、休憩回数も多くなって実際は6時間かかりました。
帰りは疲れ果てて自走で名古屋回りする気力と体力がなかったので、鳥羽から渥美半島の伊良湖岬まで伊勢湾をフェリーで渡って少し楽をしましたが、いまだに全身ダルダル感が残っております。
紀州サンウッド倉庫の工事は始まったばかりで、来月も行かなければなりませんからねぇ。ヒノム研究員が運転できると助かるのですが…
陽のまどの換気効果
「陽のまどの効能」の4回目は、換気効果についてです。
陽のまどは、冷たい外気を太陽熱で暖めて室内に取り入れるので、室温を下げることなく換気ができる仕組みです。
「換気」とは室内の汚れた空気を捨てて、新鮮な外気と入れ替える事を言いますが、空気の移動に伴って熱も移動しますから、せっかく暖房しているのに窓を開けて換気すれば、冷たい外気が入ってきて部屋は寒くなってしまいます。だから24時間換気設備を冬場に停めてしまう人も多いようですが、換気をしないと部屋の空気は汚れていきますから室内環境はどんどん悪くなります。コロナウイルスが蔓延していた頃には、みんなが換気に注意していましたが少し落ち着いた現在はどうなんでしょう?もうあまり意識していないかもしれませんね。
換気の種類
みなさんご存知かもしれませんが、換気には3つの方法があります。↓
一般的には第三種換気を採用されている家が多いですが、最近は第一種換気も増えてきているようです。
第三種換気は上の図のように換気扇で室内空気を排出しつつ、別に設けた換気口から外気を取り入れる仕組みなので、ここから冷たい空気が入って来る事を嫌う人が換気扇を止めてしまうのす。その不快感を与えないようにして、十分な換気をするために第一種換気があります。上図では給気と排気ファンが別々に描かれていますが、実際は1つの機械の中に2つのファンが内蔵されていて、ここに熱交換エレメントという特殊な装置を設けて、給気する冷たい外気と、室内から排気される空気が持つ熱を交換する事で、外気温そのものよりは高い温度の空気を取り入れることができる「全熱交換型換気」が行われています。
陽のまどの換気方式
陽のまどの換気は、給気に換気扇を使用する第二種換気になります。この方式は病院の手術室などに採用される換気方法で、住宅では一般的ではありませんが、ファンが強制的に外気を送り込むので、室内の圧力が外より高く(正圧)なって、建物の隙間等から冷たい外気や花粉などの浮遊粉塵が入りにくい形になります。住宅でこのような換気が行えるのは、陽のまどと言う太陽熱で外気を加温してから取り入れる仕組みを持っているからなんです。
換気量について
建築基準法で定められた換気量は、1時間にその建物の容積の半分の空気が入れ替わる換気を行う事になっています。例えばある建物の床面積が50㎡で高さが3mだったとすると、その容積は150㎥になりますが、その半分の75㎥が1時間で入れ替わる能力の換気扇を選んで設置すれば、基準をクリアする事ができます。建築基準法ではこれを24時間連続で換気するようにと定めているので、勝手に止めるという事は有ってはならないのですが、生活に支障を来すようでは、元々の換気計画に問題がありましたね。因みにこの1時間に0.5回の換気量というのは、シックハウス対策として導入された基準で、これくらいの換気量を確保しておけばシックハウスの原因となる建材等からの揮発性物質を排出して薄める効果が期待できるとして定められた値なのですが、これだけを守っていれば換気として大丈夫かと言えば「NO」だと思います。実際の生活の場では熱や水蒸気、臭気などがたくさん発生しているので、これらを捨てて新鮮空気と入れ替えてやる必要があります。必然換気量はその時の状況により変わりますが、1回/時以上の換気ができる能力が欲しいですね。ただし換気量が増えれば室温に影響が出ることになるので、換気扇の能力だけでなく、給気口の位置や換気時の空気の流れなどをしっかり考慮する必要があるでしょう。
因みに陽のまどは1~2回/時くらいの換気量を確保するようにシステム計画をしています。
陽のまどは24時間換気設備ではありません
陽のまどは第二種換気だと説明しましたが、これがあれば24時間換気設備は不要かと言えば、そうではありません。
陽のまどは太陽の状況に応じて発停するので、24時間換気設備の要件を満たしませんから別途0.5回/時相当の換気設備を設置していただく必要があります。「それでは二重設備だろ!」と言いたくなる人もいるでしょうが、換気は1種類だけで完結するものではありません。例えばトイレの換気は、用を足した後の臭気が気になるので、第三種換気により速やかに排出するのが良いでしょう。キッチンのレンジフードも同じで煮炊きによる水蒸気や油、臭気は大型の換気扇で一気に排出すべきです。例え第一種換気を採用していたとしても、こういう部位では個別に処理する方が良いと思います。
第二種換気の陽のまどに組み合わせる換気は何が良いか?との質問を受ける事がありますが、個人的には導入コストが安い第三種換気で良いと思っています。ただし北海道などの寒冷地では熱交換型換気が必須だと思うのですが、それらに陽のまどを組み合わせたとしても特に問題はないでしょう。これでなければダメというものはありませんので、用途とコストとのバランスで判断していただければ良いと思います。
建物にとっても有用な陽のまど
建物の床下はすごく湿気が溜まりやすい部位です。特に最近の建物は、基礎に土間コンクリートを打っているので、表面的には乾いているもののコンクリート中の水分が長期に渡って放出されますから、床下の換気がないと湿気で床を支える木材や金属製の束などがダメージを受ける事になるでしょう。建物も人間と同じで足元から弱って来ます。人間の体に建物と陽のまどの機能を当て嵌めてみると、建物の屋根や外壁は皮膚、柱や梁は骨格と言えます。その中で陽のまどの送風機は心臓の役割をしており、ダクトは血管にあたります。「集熱空気」という熱い血液が澱むことなく建物中を巡れば健全な状態を保てますが、送風機が壊れたり、そもそも使われていなかったりしたら血流が途絶えて体組織が壊死するように建物も傷んでしまうでしょう。陽のまどが無い家であれば、元々心臓や血管に相当するものがないし、熱い血液もつくられないので、人が住んでいなければ劣化は早いと思います。高気密・高断熱化を図るという事は自然に空気の入れ替えが起こらなくなる事なので、換気によって積極的に空気を動かしてやらないと建物を長持ちさせることができません。換気は人にとっても建物にとっても大切なものなのだという事をしっかり認識していただきたいと思います。