合同会社サンシャイン・ラボ 代表の松原です。
軽井沢の現場を訪問したのは12月初旬だったので降雪を心配したのですが、幸いお天気に恵まれて助かりました。でも途中から地元で「浅間降ろし」と呼ばれる冷たい風にのって風花が舞い始めたので、昼休み返上で作業を急ぎました。
星野山荘
集熱面の施工を終えたあとに待望の「星野山荘」を見学しました。星野山荘Ⅱの工事と同時進行でこちらの改修工事も行われています。二十数年ぶりの星野山荘は、築60年が経過しているもののしっかり手入れされてきていたようで綺麗な状態で維持されていました。
星野山荘と言えばポット式石油ストーブによる煙道熱交換式暖房(奥村式ストーブ暖房)です。
↓は空気集熱式ソーラーに関わった人ならみなさんご存知の図ですが、石油ストーブの熱を建物の隅々まで行き渡らせる仕掛けですね。
私自身、OMに入った時(1994年)にこのような考え方と、これに対応する部材が設計・施工マニュアルに記載されている事は知っていたのですが、実際に設置されているものを見たのは、この星野山荘とあと一件だけ。今でも現役ってあるのかわかりませんが、残念ながら今回の改修工事を機に奥村式ストーブ暖房は撤去されるそうです。
今回のお話をいただいた当初は、煙道熱交換ダクト上部にある送風機を作り直したいので考えて欲しいというものだったので少しワクワクしたのですが、実施に至らずちょっと残念。でもこの技術ってよくよく考えてみると微妙なバランスで成り立っているので、危険と隣り合わせの難しいものなんですよね。
この図を見ながら星野山荘の内部に立つと、奥村先生が言われた「熱と空気の動きをデザインする」という意味が、よく理解できます。ただ単に煙道熱交換式暖房を設備として導入しただけでなく、その熱が無駄なく建物全体に行き渡るようにするための熱と空気の動きが考えつくされた建物の形をしています。「この熱源なんだから建物はこうでなければならない」という考え方が、空気と同様に隅々まで行き渡るように設計されている様に改めて感動しました。私もずっと空気集熱式ソーラーに携わっている一人ですが「熱と空気の動きをデザインする」という奥村先生の考え方を守り、次の世代に引き継いでいかなければならないと思っています。
今回の改修工事では、当初は現行基準レベルの耐震性能と省エネ性能をこの建物に持たせようとしたのだそうですが、検討してみるととても困難だという事がわかり、隣地に新しい建物をつくる事になったのだそうです。武山さんが構造検討のためにつくられた1/20の軸組み模型を見せていただきましたが、60年前にこれを建てた大工さんの苦労が偲ばれます。でも誰かの強い意志が感じられるものって、長い時が経っても変わらずに良いものだなぁと思います。陽のまどもかく在りたい!