合同会社サンシャイン・ラボ 代表の松原です。
先日、一般のお客さまから「陽のまど」と「太陽光発電」の違いについての質問がありました。
私たちとしては「全然別物」と思っていても、一般の方には同じに見えてしまうということなんですね。
説明不足を反省しつつ、今日はこの二つのソーラーシステムの違いをお話したいと思います。
ソーラーと言えば!
いまどき「ソーラー」と言えば「太陽光発電」を思い浮かべる人が、ほとんどかと思います。太陽光発電は、太陽の光エネルギーを太陽電池が「電気」に変換して、室内の照明や空調設備、家電品等の動力源として利用することができます。最近は多くの建物の屋根に↓のようなパネルが載っていますから「ソーラー=太陽光発電」と思われるのも当然ですね。

一方の「陽のまど」は、太陽の熱エネルギーで空気を温めて、室内の暖房や換気に利用するものになります。太陽熱をそのまま宅内の熱として利用するので、太陽光発電のような「変換」という行為がありませんから、非常に無駄のない太陽エネルギーの利用方法と言えるでしょう。
↓ 屋根の上に並んだトップライトのようなものが「陽のまど」と称する集熱装置で、この中で熱い空気をつくります。

「太陽光発電」と「陽のまど」の違いを簡単に説明すると、太陽から「電気」を得るか、「熱」を得るかの違いという事になります。
「電気」も「熱」も私たちが生活する上では、無くてはならないものです。ただ「熱」をつくり出すのに電気から得るのは、あまり効率がいいとは言えません。私の家には、電気式の洗濯・乾燥機がありますが、これで洗濯から乾燥まで行うと仕上がりに3時間くらいかかります。厚手の衣類などですと乾燥不十分で、更に1時間延長なんて事もあります。だから時間が無い時や量が多い時には、近くのコインランドリーに行くのですが、ここにあるのは業務用のガス式洗濯・乾燥機で、50分で仕上がります。このように「熱」は、燃焼機器の方が短時間でしっかり働いてくれるので、高温の熱が欲しいのであれば、電気以外の熱源を利用する方が効果的でしょう。因みに我が家の洗濯物は、よほど天気が悪い日が続かない限り乾燥機は使わず、おひさまと風に乾かしてもらっています。
冷房についてはエアコンに頼るしかないのですが、暖房に関しては熱源として太陽を利用するというのは、とても理にかなっていると思うのです。なんたって請求書の来ないエネルギーですからね。これを上手に使えば、エアコンにはない心地よい温熱環境、空気環境を得ることが出来るでしょう。私たちが「陽のまど」をお勧めする理由は、ここにあります。
電気について考えてみよう!
私たちの暮らしに電気は欠かせないエネルギーです。「電気は当たり前に使えるもの」と思って暮らしていますが、2011年の東日本大震災における原発事故で電力を喪失した際には、「電気があることが当たり前ではない」ということを痛感させられました。その時の記憶も薄れてきている昨今、ここにきて光熱費の高騰という問題が迫ってきています。2011年の時は「原発に代えて太陽光発電を」ということで「太陽光ブーム」が起こりましたが、その熱が冷めてきた頃に今度は、燃料費高騰による電気料金値上げという事で、また太陽光発電を勧める動きが出てきています。
太陽光発電という技術は素晴らしいと思うのですが、そういう技術に頼る前に「電気の使い方」を見直すべきではないでしょうか?快適を得るためになんでも電化製品、電気設備に任せていては、どれだけ供給を受けても足りなくなります。持続可能な社会を目指すのであれば、みんながエネルギーの使い方を考え、見直すべきと思うのです。
太陽光発電って本当にお得なの?
インターネットで「太陽光発電」と検索すると太陽光発電の導入にあたって「どれがお得か!」という情報が、津波のように押し寄せてきます。「初期費用 0円」「点検・メンテナンス費用 0円」などと購買意欲をそそるような文言が、いっぱい並んでいますが、こういう言葉にみんな惹かれてしまう。悪く言えば騙されてしまうんですよね。
「太陽光発電設備+蓄電池をリースで導入しましょう!」と書かれた商品について内容を見てみました。初期の設置費用は0円、リース期間中の点検費用も0円、自然災害で太陽光発電設備が被害を受けた時も無償で修理、リース契約終了と共に機器を無償譲渡などなど、月々のリース料だけで、これだけのサービスが受けられるとなれば、みんな「お得!」と感じることでしょう。でもよく考えていただきたいのが、設備は必ず経年劣化するということです。リース契約で、このサービスを利用したとして、新築当初は良いでしょう。しかし経年と共に性能は衰えて行きます。10年~15年が経過してリースアップで無償譲渡される頃には新しいものに交換しなければならない状態かもしれません。リース料は掛からなくなりますが、新たな交換費用の負担が生じます。その頃には補助金もないでしょうし、個人の財布から支出する事になるでしょう。ひょっとすると機器の交換を促すような新たなローンやリースなどの金融商品が生まれてくるかもしれませんが、そういう補助無しに数百万円もの出費をしてまで継続する人がどれだけいるでしょうか?すごく疑問です。
太陽電池の交換については、廃棄のことも問題視されています。以下は経済産業省・資源エネルギー庁のホームページからですが、正直なところ問題提起だけで、具体的な方針は検討中という感じですね。
2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?再エネの廃棄物問題|エネこれ|資源エネルギー庁
前述のような機器交換のための金融支援があれば、取り組む人もいるかもしれませんが、「もう年金暮らしになっている中で、あと何年この家に住むかも分からないのに今更借金してまで交換なんかできるか」と言われてしまったら、その家の太陽光発電は継続されません。また屋根から太陽電池を撤去するのにもお金が掛かりますから、その費用が捻出できなければ「放置」という事になります。これが一番問題で、太陽電池は光が当たれば勝手に発電しますから、機器が故障してコントロールを失った状態で放置すれば火災等のリスクが高くなって、とても危険です。太陽光発電をやめるのであれば、必ず太陽電池を撤去して、適切に処分しなければならないのですが、空き家問題も深刻化する中で、その建物に太陽電池が載っていたならば… 想像すると恐ろしいです。
個人資産にしたのが間違いなのでは?
2011年の東日本大震災による福島第一原発の事故のあと、再生可能エネルギーの積極的な利用が叫ばれて、太陽光発電の普及が急進しました。国が多くの補助金を出して導入促進にあたり、これに呼応する形で「ZEH(ゼロエネルギー住宅)」がたくさんつくられました。この時の経済効果は凄いものだったと思いますが、時間が経過し、売電価格の減額などもあって「太陽光ブーム」は下火になって行きました。
私は「ブーム」にしてしまった事が大きな間違いであったと思うのです。本来は原発事故による将来的な電力供給への不安からの再生可能エネルギーを利用しようという話だった訳ですから、一過性の「ブーム」で終わらせてはいけなかったたはずなのです。それを経済効果だけの話にしてしまった。一部では儲かったかもしれませんが、将来に負担を残す愚かな施策だったように思います。
2011年当時に私が考えた事ですが、電力会社が個人宅の屋根や敷地を借り受けて、そこに太陽光発電設備を設置して、このエリアで何メガワットの発電量を確保するというような事業を行い、原発の停止分を賄えるような電力供給の構造を確立するのが良いのではないかと思いました。電力会社の管理下で機器の設置やメンテナンス、交換等が行われれば、太陽光パネルのゴミ問題も四散させずに済むと思うのです。でも個人の資産にしてしまった為に継続するも、しないも個人の判断に委ねることになり、電力確保にも悪影響を与えることになってしまいました。太陽電池を設置するために山の木を切り倒す行為を認めてしまっているのもおかしい。国際公約を守るためだとか、経済の活性化のためだとか、それらは全て「現在」のことでしかなくて、大きな課題を「未来」に先送りしているだけのように思います。本当にこんな事をやっていて良いのでしょうか? 未来が心配です。