家に命を与える陽のまど

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合同会社サンシャイン・ラボ 代表の松原です。

「家に命を与える陽のまど」 私はこのシステムを導入する意味をこんな風に考えています。
「命を与える」だなんて、誇大広告のように思われるかもしれませんね。
人間の身体は、心臓から送り出された新鮮な血液が、身体の隅々まで行き渡ることで健康な状態を維持できますが、建物もこれと同じで、空気が血液の役割をして、家の隅々まで行き渡ることで、建物を長持ちさせることができるのです。人が住まなくなった空き家や、めったに訪れることがない別荘などは、空気の入れ替わりがないから早くに朽ちますよね。血流が途絶えて体組織が壊死するのと同じです。
今日は、陽のまどを導入すると建物に人間の身体と同じ機能を持たせることができるというお話をしようと思います。

建物に血流をつくる陽のまど

陽のまどの家には、人間の身体に備わる臓器と同じ機能をするものが存在します。普通は、家を人の身体に見立てるようなことはしませんから、一般の家にはそんなものはありません。では陽のまどの家には何が有るのか?一つずつ見て行きたいと思います。

まずは、血液に相当する熱い空気をつくり出す「集熱パネル」です。このパネルが太陽光を浴びると内部で熱い空気がつくられます。

次は「脳」の役割をする「温度スイッチ」です。陽のまどに「デジタル」なものは使われておらず、バイメタル式温度スイッチというアナログ方式のスイッチで集熱パネル内の温度を検知させています。日が昇り、集熱パネル内の温度が規定値を越えると、このスイッチがONになって、ソーラーファンボックスが運転。熱い空気を室内に取り入れます。日が沈んで温度が下がると、このスイッチがOFFになってファンが停止し、電動ダンパーという「弁」が閉じて冷気の侵入を防ぎます。

集熱パネル内でつくられた熱い空気を室内に送り込む「心臓」の働きをするのが「ソーラーファンボックス」です。一般に市販されている交流100Vのシロッコファンを少しアレンジして使用しています。省エネ性が云々などと言うと、もっと効率の良いDCモーターのファンなどが出回っていますが、長期的な信頼性や、部品の入手性などを考えると、特別なものではなく、昔から多方面で使われ続けているものの方が安心です。「心臓」が強くないと健康でいられませんからね。

写真左手にある電動ダンパーは、集熱面と室内の断熱境界線に設置される逆流を防止するための「弁」で、ソーラーファンボックスと連動します。

陽のまどの家には、屋根から床下まで1本のダクトが通ります。30坪程度の住宅の場合は、内径Φ150mm(外径Φ200mm)のグラスウール製ダクトを使用します。できるだけ曲がりを少なくして、最短距離で床下までダクティングするように計画します。床下は、基礎外周部を断熱し、気密化された密閉空間として、床下全体に空気が万遍なく広がるようにします。血液を体中に行き渡らせるための「血管」と同じ役割ですね。

床下に送られた集熱空気は「床吹出口」を目指して広がります。4で床下は「密閉空間」にすると書きましたが、出口がなければ、どんなにファンで押し込んでも空気は入って行きません。「床吹出口」を室内の各所にバランスよく設けることで、床下全体から建物全体に集熱空気が広がって行くのです。

家は「物」としてしか見られていませんが、健康な状態を維持するためには、人間の身体と同じように血流(空気の動き)が大切だと思います。最近は「全館空調」を導入する家が増えてきているようですが、私はできるだけシンプルなものの方が長く使えるし、病気(故障)した時にも処置が容易なので、今回説明したような単純な仕組みで家が長持ちしてくれる方が良いのではないかと考えています。もちろんそれは家だけではなく、そこに住まう人の健康にも大きく寄与することでしょう。

陽のまどは「養〇酒」みたいなもの

陽のまどには「即効性」がありません。今が寒いからといって、エアコンのようにすぐに暖房できるというものではないのです。なぜなら陽のまどの熱源は「おひさま」だけ。太陽が出ていなければ働きません。だから日の出ている間にできるだけ多くの熱を集めて家の中に蓄えておくことが必要で、集熱と蓄熱、そして建物の保温力の3つが、バランスよく機能することで、心地よい穏やかな温熱環境を得ることが出来るのです。

陽のまどは、毎日コツコツと太陽熱を集め、宅内に蓄えて温めると共に、建物全体の空気を動かすことで、健全な状態を保持することができます。例えると陽のまどは、みなさんご存知の「養〇酒」のようなものでしょうか。「一日これくらいずつお試しください」を毎日繰り返すことで、血行が促進されて病気になりにくい健康な状態を維持してくれますが、病気に罹ってしまってから「養〇酒」を飲んでも間に合いません。その時は医者の処方する薬を飲んで治すことになります。医者の処方する薬=エアコンだと思ってもらうとわかりやすいですね。今すぐ部屋を温めたい場合は、エアコンの即効性に頼るしかないけど、日常的な薬漬けは身体に悪い。陽のまどがベースとなる温熱環境を整えていれば、それだけで過ごすこともできるだろうし、もし足りないと感じてエアコンを使用した場合でも運転時間やエネルギーの使用量(投薬量)は少なくて済むでしょう。家を人間の身体に当て嵌めて考えてみると、本質的に何が大切なのかが見えて来ると思います。