青トラ訪問記-36 今年も多摩美大

ブログ味を究める

合同会社サンシャイン・ラボ 代表の松原です。

昨年に続いて今年も多摩美術大学から大学院生向けの特別講義の依頼を受けました。「昨年の講義の評判が良かったからまた今年もお願いしたい」との事だったのですが「評判が良かったって本当かよ?」と思いました。でも若い人と交流できる機会なんてそんなに多くないし、自分自身の勉強にもなることなので、依頼を受けることにしました。
昨年の講義の様子は↓の通りです。

青トラ訪問記-11 多摩美術大の特別講義 – サンシャイン・ラボ

さて今年もギリギリまで仕事が立て込んでいて、講義内容をしっかりまとめる余裕が無かったので、最後の仕上げは移動中の車の中で行いました。去年は講義の流れを車の中で確認しながら国道1号線を東に向かって走っていたら、いつもの間にか箱根を越えていたのですが、今年も少し早めに浜松を出発して多摩美術大学・八王子キャンパスを目指しました。途中、山中湖で綺麗な富士山を見ることができたので、今日の講義の成功を祈りました。

未来のために今を考える

今年の私の特別講義のタイトルは【未来のために今を考える – 空気集熱式ソーラーが果たす役割】としました。前半は「空気集熱式ソーラーとは何ぞや?」ということで、まずはその仕組みや効能などについて説明しました。

去年の学生さんにも聞いたことですが、今年も次の質問をしました。

Q:これから30年~50年先に電気やガス、石油、水といった暮らしに必要なエネルギー源が、現在と同じように使えていると思いますか?

このブログを読まれているあなたは、この質問についてどのようにお考えでしょうか?
この日の受講生は、大学院の1年生との事でしたから22、23歳くらいでしょうか。30年後は52歳、50年後は72歳ですから病気や交通事故等に遭わない限り元気なお爺ちゃん、お婆ちゃんをやっている事でしょう。そんな彼らが自分たちの将来の暮らしの様子をどのように捉えているのか、とても興味があります。少し考えてもらった後に訊ねました。

「現在と同じように何不自由なく使えていると思う人は手を挙げて下さい」

この問いに対して手を挙げた人は誰もいませんでした。
つまり彼らは、自分たちが進んで行く先の未来のエネルギー事情は悪くなると感じているようです。
その理由を聞いてみたところ

・化石燃料に依存しているので、資源の枯渇が心配
・気候変動、自然災害に対する不安
・不安定な世界情勢

などを理由として挙げていました。昨年の受講生も同じことを言っていましたね。
自然災害などは人の力でどうこうできるものではありませんが「資源の枯渇」などは、地球全体で「エネルギーの使い方」を見直せば、100年で枯渇するものを1000年にまで延ばすことができるかもしれません。
国連では「SDG’sで持続可能な社会を目指す!」という目標を掲げていますが、経済成長を前提としたこれらの取組みでは、持続は難しいと思うのです。若い人たちもその事を感じ取っているように思いました。

私は持続可能な社会の見習うべきお手本は「縄文時代」だと思うと話しました。13000年も続いた縄文時代では、遺跡の墳墓からは、戦いで亡くなった人の骨が出土していないそうで、そのあとの弥生時代以降からは争いで傷付いた人骨がたくさん出てくる。つまり縄文時代は平和な時代だったという事を表しています。繫栄していたかどうかはわからないけれど13000年もの長きに渡って人の営みが続いていたというのは、凄い事だと思うのです。私が今年の夏に訪れた青森県の三内丸山遺跡は、縄文時代中期の大規模集落跡ですが1000年以上続いたと言われています。2025年の1000年前といえば1025年だから平安時代、藤原氏の絶頂期あたりでしょうか。そこから令和7年までの変わり様は、凄まじいものがありますよね。18世紀に始まる産業革命以降は、地球が数億年かけて蓄えてきた化石燃料だけに依存する社会をつくってきました。でもこれが永続的に利用できるものではないことをみんな気付き始めています。でも今すぐに枯渇する訳ではないし、やはり便利な方が良いですからね。将来に不安を感じつつも今は便利さ、快適さを求めてしまうのはやむを得ない事なのでしょう。
先日、還暦を迎えたばかりの私などは、あと10年~20年くらいでこの世のステージを下りる事になるので、その間に「何事もなければいいや」くらいしか思っていませんが、子供や孫の時代を想像すると気の毒に思えたりします。もしそういう事が想定されるのであれば、今から出来る事を始めて行くべきではないのか?というのが、今回の私の講義の大きなテーマで、そういう中で空気集熱式ソーラーが果たせる役割は大きいものがあるという事を話しました。90分という長そうで短い講義の中でどれくらいの事が受講生に伝わったかわかりませんが、彼らが社会に出た時に今回の話を思い出して「持続可能な建築を実現して行ってくれたらいいな」と思います。

講義を終えた数日後に多摩美大から今回の私の講義に対する受講生の感想が届きました。これを読むとみんなしっかり理解してくれていたみたいなので嬉しくなりました。こういう感じで若い世代に伝えて行くことも私のやるべき仕事なんだと改めて感じた次第です。