合同会社サンシャイン・ラボ 代表の松原です。
今日は陽のまどを構成する部材のひとつ「ダクト接続ボックス」についてお話します。
これは何をする物かと言うと、集熱パネルから屋根を貫通して室内へダクトを通す部分に使用する部材で、下図のように納まります。

集熱面で温めた空気を室内に取り入れる方法については、私がこの仕事を始めた30年前には↓のようなやり方をしていました。小屋裏の棟に近い所に半径50cmのかまぼこ型棟ダクトを取付け、垂木と垂木の間を流れる集熱空気を取り入れるためのスリーブダクト(Φ100mm)を45cm間隔で設けていました。(写真参照)このダクト工事を私も何度か経験しましたが、手間がかかって本当に大変なんです。これと集熱面の工事で約1週間くらいかかっていました。加えてグラスウール製のダクトを切ったり、つないだりしなければならないので、体中がとにかく痒い、痒い!


当初は「こういうものだ」と思ってやっていましたが、少しでも手間を減らせないか?と考えて、1999年に外付け棟ダクトというものを私が考案。集熱パネルとの組み合わせにより作業時間が大幅に短縮し、半日で完成させることができるようになりました。

「外付け棟ダクト」は、それまで小屋裏に設けていたかまぼこ型の棟ダクトをやめて、屋根上で集熱空気をまとめるようにし、屋根面に1ヵ所だけダクト貫通用の開口を設けて、ここから室内にダクティングします。
この「1ヵ所だけ」という部分は、当初は↑のように屋根面に対して垂直に貫通させるものでしたが、室内でのダクトスペースが余分を取られてしまうので、省スペース化を図るために建物に対して垂直に貫通させるボックス状のダクトをつくりました。これが現在に至る「ダクト接続ボックス」のはじまりです。

「ダクト接続ボックス」は、ガルバリウム鋼板の筐体の内側に断熱材を貼った仕様で、屋根勾配に合わせた形状になっています。標準品は、水下高250mmのショートタイプと350mmのロングタイプを用意していますが、最近は屋根の断熱材を厚くする傾向にあるので、最大900mmまで対応します。




変り種ダクト接続ボックス
これまでに様々な寸法、形状のダクト接続ボックスをつくってきましたが、その中でも特に変わった仕様のものをご紹介します。
1.西向き屋根の南向き集熱面
東から西へ2寸勾配で下る片流れ屋根の上に南向き5寸勾配でつくられた集熱屋根にパネルを設置した事例です。
2つの勾配に対応するために「ピサの斜塔」のようなボックスをつくりました。




2.2つの屋根勾配に対応する集熱面
↓は現在進行中の物件に対応するために設計・製作している特注のダクト接続ボックスです。
南に3寸勾配で下る屋根なんだけど、棟が西から東へ1寸勾配で下っているという超難易度の高い屋根に集熱面をつくる事になりました。




紙やスチレンボードで作る分には何も問題ないのですが、いざ本番で金属で作ると微妙な折り曲げの角度が影響したりしてなかなか組み立てが大変。最初は面白そうと思って受けましたが、やはりシンプルなものが良いですね。
今月中旬に納品して施工に立ち会う事になっているのですが↑模型のように綺麗に納まってくれることを祈るばかりです。
「ダクト接続ボックス」なんて全くの脇役部材ですが、これが有るのと無いのとでは、施工性が大きく違ってきます。昔の施工を知っている人と話をすると「あの頃は大変だったよねぇ」などと苦労話に花が咲きますが、そんな苦労など無いに越したことはないのですから、この部材をつくったことは正解だったと思ってます。

