合同会社サンシャイン・ラボ 代表の松原です。
先日雨漏りの調査で対応した甲府の工務店さんからその後の様子について連絡がありました。このところ暑さも大変ですが、突然のゲリラ雷雨にも悩まされています。さっきまで晴れていたと思ったら瞬く間に雨雲が広がって、凄まじい勢いで雨が降るという事象が全国各地で起こっていますが、山梨県甲府市も例外ではなく、この数日の間に何度もゲリラ雷雨に見舞われたそうです。そんな中でも雨漏りは起こらなかったそうで、長年のトラブルが解決したと自信を持って言える確証が得られたとの報告でした。私もその後の事が気になっていたので、この報告は嬉しかったですね。
ヒートショックの恐ろしさ
前回、陽のまどの第1の効能として「冬の朝も元気な目覚め」という事を紹介しました。今回は2番目の効能として家の中に生じる温度差が身体に与える衝撃(ヒートショック)の予防に陽のまどが有効というお話をします。
上記の通り私はヒートショックにより心臓発作を起こした経験があります。それは男性の本厄の年でしたから今から16年ほど前の事になりますが、冬の寒い夜に自宅で入浴して身体を温めた後、脱衣所に出てきた時に急に胸が苦しくなるという症状に見舞われました。運動した時はもちろんの事、温度差のある環境に身を置いたときに頻繁に発作が起きるようになったので病院で検査を受けたところ「狭心症」との診断でした。心臓の血管が詰まって血流が悪くなってしまったがために起きる発作で、心筋梗塞の一歩手前という状態でした。心臓の血管が詰まった理由は、生活習慣やストレスなど様々な原因が挙げられますが、発作を起こさせるきっかけに室内の温度差が関わっているという事を身をもって知る事になったのです。
心臓発作を抑える薬としてニトロを使いますが、これってどんな味かご存知ですか?
ニトロは発作が起きた時に錠剤を舌の下に置いておくと、スッと楽にしてくれます。医者からは、発作が起きたら我慢せずにニトロを使うようにと言われていたので常に持ち歩いていましたが、高速道路を運転中に発作が起きて、車を停車できる状況ではないし、カバンの中からニトロが見つからないしで焦った記憶があります。
で、ニトロのお味ですが、整腸剤のビオフェルミンみたいな感じでしたね。その記憶も随分遠いものになりましたが、手術をしてから今日まで異常なく過ごせている事に感謝です。
狭心症になった時の私はOMソーラーに勤めていました。OMソーラーの家は、陽のまどと同様に建物全体で熱の動きを考える家づくりをするので、ヒートショックを受けるような温熱環境になりにくいのですが、ソーラーの無い一般の家の場合は、暖房の効いたリビングを一歩出ると、そこには寒~い廊下が待っていて、その先にあるトイレは更に寒いという血圧が乱高下してしまうような温熱環境の中に身を置いているケースが多いです。過去に実測した家ではリビングと廊下で20℃近い温度差がある家もありました。たった1歩で20℃もの差があったら健常な人でも身震いしてしまいますが、高血圧症の人や血管が脆くなった高齢者であれば、想像するだけでも恐ろしいことです。
ヒートショックによる死亡者数は、交通事故による死者よりもはるかに多いと言われていますので、安全に安心して暮らしていくためには、温度差の無い穏やかな温熱環境をつくる必要があります。ですが温度差解消のためにお風呂やトイレをエアコン等で常時暖房しておく人は、まずいないでしょう。暖房便座ではヒートショック対策にはなりませんからね。(笑)
建物の断熱性能を高めていけば温度差は小さくなりますが、高断熱住宅にすれば問題は解決するのか?と言えば、それだけでは不十分。断熱材は「保温」はできるけど「加温」はできないので、室温を1℃でも上げるためには何らかの熱源が必要です。そこでタダのエネルギー「太陽熱」を利用して温度差を小さくするのが、効果的であり、合理的であると考えるのです。
「温熱バリアフリー」を実現する陽のまど
お年寄りや体の不自由な方の行動に障害となる階段や段差を解消する事を「バリアフリー化」と言いますが、前述のように室内の温度差を解消する事も重要なので「温熱バリアフリー化」も住宅の計画に加えるべきと考えます。
私たちが提案する陽のまどは、屋根や外壁面で集めた太陽熱を床下を介して家全体に広げる仕組みなので、日当たりの悪い建物北側に位置する部屋にも熱を届ける事ができます。何より重要なのは熱を持った空気が移動する仕組みを建物に持たせている事が、人の健康だけでなく、建物の耐久性にも大きく貢献してくれるので、これに高断熱な躯体を組み合わせる事により「温熱バリアフリー化」が実現できるのです。
既存の家の温熱環境を改善したい
新築の家を暖かくする事は難しくありませんが、既存の寒い家からヒートショックを無くすというのは、簡単な事ではありません。だからこそOMソーラーのような建物全体の温度を底上げするような仕掛けが欲しいのですが、残念ながら当時のOMには、既存住宅のリフォームに対応できるハードの準備がなかったので、私はこれをつくりたいと思いましたが、残念ながら理解を得られることができず、実現には至りませんでした。
その後、14年間お世話になったOMソーラーを退職し、ソーラーから足を洗おうと思ったのですが、なぜかソーラー絡みの仕事が私にくっついて来るので「だったらリフォームに対応できるソーラーをつくろう」と思ったのが現在の「陽のまど」の原点になっています。「ソーラーリフォーム」の話は、また別の機会にしたいと思いますが、新築、既築に限らず、安全に快適に暮らせる環境を提供したいという思いが、陽のまどのゆるぎないコンセプトなのです。