床吹出口のはなし

ブログ味を究める

合同会社サンシャイン・ラボ 代表の松原です。

前回は「床吹出口と床下の清掃」についてお話ししました。

床吹出口と床下の清掃 | サンシャイン・ラボ

床吹出口の役割をご理解いただけたのではないかと思うのですが、でも多くの方は、ここから石油ファンヒーターの吹出口のように暖かい風が出てくると思っている事でしょうね。実際には吹出口に手をかざしても暖かいと感じる事はないと思います。冷たくもないですけどね。

これまでにも「太陽が出ているのに暖かい風が出て来ない。システムに問題があるのではないか?」などと言われたことが何度もありましたが、このソーラーシステムの仕組みや働きを正しく知れば、どうして暖かいと感じない風が出てくるのかがわかるでしょう。今日はそんな話をしたいと思います。

↑は、陽のまどの冬の働きを説明していますが、「1.集熱パネル」で集められた太陽熱は「4.ソーラーファンボックス」により床下へ送られます。集熱空気は「6.蓄熱コンクリート」に熱を預けつつ、また床材の裏側を暖めつつ「7.床吹出口」を目指いして広がって行きます。つまり「5.立下りダクト」を通って床下に入った時点の集熱空気は、40℃とか50℃といった高い温度を持っているのですが、その後は蓄熱されたり、床を温めたりするなど分散されて、床吹出口から出てくる時には30℃前後まで下がってしまうのです。それくらいの温度だと体温よりも低いので、暖かいとは感じられないのですが、そんな状況でも太陽熱が無くなってしまった訳ではなく、室内のあちらこちらに留まって、しっかり働いていてくれているのです。

以前、他社の空気集熱式ソーラーを導入した建物で、床吹出口から暖かい風が出ている物件がありました。見学した日はとても天気が良かったので、それこそ石油ファンヒーターの吹出口のような熱い空気が出ていて驚かされました。なんでそんな高温の空気が吹き出すのか仕掛けを確認したところ、蓄熱体とすべき土間コンクリートの上面を全て断熱材で覆って蓄熱させないようにしていました。その時、同行していた見学者からは「すごい!」との声が上がっていましたが、正直なところこの方法は誤りだと思います。

「快適」の陰の主役は「蓄熱」なり

空気集熱式ソーラーで大切なのは「集熱」「蓄熱」「断熱」の3要素をバランスよく建物に持たせる事なのですが、前述のソーラーハウスでは「蓄熱」が抜けていました。確かに床吹出口からは熱い空気が出ていて「すごい!」という声も上がっていましたが、その日はたまたま天気が良くてそういう温度の空気が出ていただけで、お日さまが雲に隠れたらすぐに温度が下がってしまいます。また寒い外から建物内に入った瞬間は「暖かい」と思いましたが、しばらく滞在していると「暑い」と感じるようになりました。このような温度変化による不快感を与えないために「蓄熱」が必要なのです。

木造の建物は熱容量が小さいので、室温が不安定になりやすいです。これは断熱性能云々の話ではなくて、その建物が持つ蓄熱容量の違いから来るものです。昔ながらの「蔵」は分厚い土壁で作られていて夏でも冬でも室温の変化が小さく、低温で安定しているといった感じでした。分厚い土壁は熱容量が大きいので、熱し難く、冷め難いので、急激な温度変化が起きないのです。しかし一般の木造建築には蔵のような分厚い土壁はなく、比較的熱容量の小さい材料で作られていますから、どうしても室温が安定しません。そんな木造建築の部位で最も熱容量が大きいのが基礎のコンクリートです。コンクリートは石と同じで熱し難く、冷め難い材料であり「基礎」という建物の構造体として元々存在しているものですから、これを蓄熱体として利用するのが最も合理的と言えます。その他の熱容量の大きい材料としては「水」が挙げられますが、蓄熱のために大量の水を容器に入れて床下に設置するのは大変な作業とコストがかかる話であり、また床下で何らかのトラブルが発生した時にこの水タンクが邪魔になる事も考えられます。蓄熱のために何かをわざわざ用意するよりも、床下にある基礎のコンクリートをそのまま利用する方が、考え方がシンプルですよね。

床吹出口の流量調整

床吹出口の役割については、前回のブログで述べた通りですが、床下での集熱空気の動きをコントロールするのは、各吹出口に備えられた開口面積の調節機能です。

上図において床吹出口①と②が同じ開口面積だったとすると立下りダクトに近い床吹出口①からたくさん空気が出て、遠い②は少なくなるでしょう。そこで各床吹出口の流量調整機能で床吹出口①の開口面積を減らし、②を全開にしてやるとバランスよく空気が流れるようになります。流量としては、全ての吹出口において1m/秒程度の風速になるように調整します。

木製床吹出口

陽のまどで取り扱っている木製床吹出口は、下図の寸法、形状、仕様で、北九州にある木工所の手作り品。
丁寧に面取りされている格子のお陰で、足触りがとても良いです。

木製床吹出口の材種は栂(無塗装品) 杉や檜、松などの床材にフィットします。ウォールナットなどの濃い色目の床材の場合は、現場で塗装して色を合わせても良いでしょう。裏面に開口調整のための脱着式の板が取付けられるようになっています。

金属製床吹出口

陽のまどの金属製床吹出口は、私が設計したオリジナル品。静岡県磐田市にある金属加工会社で製造されています。

特徴は開口が全開/全閉だけでなく1/3開という中間の開口が選択できること。前述の流量調整に役に立ちます。
色はグレーとベージュの2種類を用意しています。

陽のまどの家では、リビングなど意匠性が求められる部位には木製床吹出口。サニタリーやトイレ、廊下などには金属製床吹出口という感じで使い分けられることも多いです。

是非使ってみて下さい!

基礎断熱を採用する建物では、床下も居室と同じ扱いになりますから床吹出口は必須アイテムです。世の中には様々な床吹出口が流通していますが、弊社の製品も選択肢の一つに加えて頂けましたら幸いです。

◆木製床吹出口:栂製 L600xW88  価格:9,800円(税、送料別)

◆金属製床吹出口:スチール製(グレー/ベージュ) L600xW100  価格:5,700円(税、送料別)

詳しくは合同会社サンシャイン・ラボ 053-401-4008 またはinfo@sunshine-labo.jpへお問い合わせください。