青トラ訪問記11 多摩美術大の特別講義

ブログ味を究める

合同会社サンシャイン・ラボ 代表の松原です。

早いもので気がつけば12月。「師走」というだけあって忙しく飛び回っています。今月は遠方への出張が4回あるので、身体が持つのか不安に感じながら、笑顔で新年が迎えられるように頑張って行きたいと思います。

講義準備は青トラの中で

多摩美術大学から依頼を受けて「建築技術特論」という大学院生向けの特別講義を行ってきました。会場は東京都八王子市にある多摩美術大学 八王子キャンパス。
依頼を受けたはいいけど、時間に追われて講義内容をまとめる余裕がなく、とりあえず詰め込むだけ詰め込んだ講義用のパワーポイントを用意しましたが、さすがにこのままでは準備不足だなぁと思い、行きの車の中で時間配分等を考えることにしました。講義は14:50からという事で、時間に余裕があったので、青トラで国道1号線を東へ走りながら講義の内容を考える事にしたのですが、いつの間にか静岡を過ぎ、富士、沼津、三島も過ぎて箱根を越えていました。途中で東名高速に乗るつもりだったのに小田原まで下道で来てしまったのには、自分でもビックリです。お陰でしっかり頭の中を整理する事が出来たので、小田原厚木道路の大磯PAでゆっくりお昼をいただきました。

今回の私の講義のテーマは「おいしい建築をつくろう! 空気集熱式ソーラーで実現する心地よい住まいの形」というものです。大学院生4名という少人数でしたが、出来る限り丁寧な説明を心掛けました。主な講義の内容は以下の通りです。

1.自己紹介
2.空気集熱式ソーラーとは
3.1人の建築家の好奇心から始まった空気集熱式ソーラー
4.空気集熱式ソーラーあれこれ
5.空気集熱式ソーラー 設備と捉えるか?建築と捉えるか?
6.なぜ太陽を利用するのか
7.空気集熱式ソーラーを導入するメリット
  冬の朝が寒くない
  ヒートショック防止
  快適の秘訣は「頭寒足熱」
  きれいな空気で建物を満たす
  「体感温度」をよくする
8.家にも体温があった方がいい
9.大切なのはエネルギーの使い方
10. 自然室温で暮らせる家
11. おいしい建築をつくろう!
12. 合同会社サンシャイン・ラボの空気集熱式ソーラー「陽のまど」

冒頭に「空気集熱式ソーラーって知ってますか?」と受講生に問いかけたところ、残念ながら誰も知りませんでした。少々ショックではありましたが、まあそんなものでしょうね。
今回の講義の依頼を受けた一番の理由は、この技術の未来を託せる仲間を増やす事。だから今まで空気集熱式ソーラーの事を知らなくても、彼らが社会に出て建築の世界で活躍する時に今日の事を思い出して実践してくれたらそれで良いのです。

「おいしい建築をつくろう!」は、デザインを学ぶ受講生に一番理解して欲しかった事。「うわ~!おいしそう!!」と思わせる料理の見せ方、その美しさや楽しさと、街の中で見かける美しいデザインの建築、格好いい建築には、どちらも初めに視覚で楽しませるという部分に共通性を感じます。料理において一番大切なのは、食べた人に「おいしい!」と言わせる事。その一言を聞くために料理人は腕を振るいます。では建築における「おいしい!」とは何でしょうか?この質問を受講生に投げかけました。しばらく考えた後、1人の学生さんが「心地よさ」と答えてくれたのですが、私が求めていたものと同じで嬉しかった!
どんなにインスタ映えする盛り付けの料理でも食べて美味しくなければ意味がない。どんなにカッコいいデザインの建物であっても、住んで不快に感じるようならば「不味い建築」と言えるでしょう。料理人が自分の舌で味の良し悪しを判断するのと同じように、建築設計者や施工者も自分の身体で心地よさの良し悪しを判断できなければなりません。それを安易に空調設備機器に委ねるのは、味付けを化学調味料に任せるのと同じこと。味覚音痴な建築家にならないように「味」を学んで欲しいと伝えました。

「1コマ90分は長いなぁ」と思って臨んだ講義でしたが、始まってみればあっという間の90分でした。後半には学生さん一人ひとりから質問と感想を聞く事できましたが「空気集熱式ソーラーのデメリットって何ですか?」といった鋭い質問があったりして、若い学生さん達とのやり取りがとても楽しかったです。
私は学者でも研究者でもなく、30年間実践してきた中で得た知識や経験をお話しただけですが、こういう時間、機会を持つことがとても大切なんだと思いました。