感性に訴えかけてくるもの

ブログ味を究める

合同会社サンシャイン・ラボ 代表の松原です。

私事で恐縮ですが、5年ぶりに我が家の車を買い替えることにしました。
昭和40年前後生まれの男性って車やバイクが好きな人が多いですよね。私もそんな一人なんですが、私が車を選ぶ時の基準は、第一に走らせて楽しい事。ハンドルを握ってワクワクさせられる車が好きです。自動車メーカーは国内外にたくさんありますが、そんな理由からこの30年間はイタリアのアルファロメオというメーカーの車を乗り継いできました。アルファロメオなんて知らない人がほとんどかと思いますが、1910年にイタリアのミラノで誕生した自動車メーカーで、戦前は数々の自動車レースで素晴らしい戦績を残しつつ高性能な高級車メーカーとしての地位を確立していました。戦後は量産車メーカーに転身しましたが、その当時のアルファロメオを率いたオラツィオ・サッタというエンジニアが、こんな言葉を残しています。

「移動が情熱的な意味を持ち、感情を揺さぶられなければアルファロメオではない」

Alfa Romeo Logo (1960-1972)

車なんてボディーとシャーシとエンジンとタイヤがあれば、どこのメーカーが作っても似たようなものだと思われているかもしれませんが、オラツィオ・サッタのこのような想いが、その後のアルファロメオ車にずっと受け継がれてきたのだと思うのです。私が初めてアルファロメオと出会ったのは1996年でしたが、まさに感情を揺さぶられたのを昨日のことのように覚えています。それから今年(2026年)までの30年間で5台のアルファロメオ車を乗り継いできました。何が良かったのか?それはあくまで私の感性に合っていたというだけであって、他の人が乗って、みんなが同じように良いと感じるかはわかりません。私も他のメーカーの車に乗った経験がそんなにある訳ではないので何とも言えませんが、30年前のアルファロメオは確かに品質面などで???な部分がありました。国産車では考えられないようなトラブルがあったし、とんでもない出費も経験しています。家族からも冷ややかな目で見られたりしましたが、それでもハンドルを握った時の喜びは、何物にも代えがたいものがあったのです。あとデザインが他メーカーのどの車にも似ていないというのも魅力の一つでしたね。過去のモデルには理解に苦しむようなデザインのものもありましたが、でも一度目にするとずっと頭に残っていて、お世辞にも美しいとは言えないアンバランスなデザインが、すごく格好よく見えて来るのです。痘痕もエクボ的な見方かもしれませんが、車の性能をレーダーチャートで表すなら、アルファロメオはかなり偏りのあるいびつな円を描くことでしょう。

2021年から乗ってきたアルファロメオは、大きく進歩していました。国際競争力を持たないと太刀打ち出来ないでしょうから他メーカーに負けないくらいの作り込みがなされていました。私の感覚では、それ以前の車が在来線の特急列車だとすると新しい車は新幹線のような速さと滑らかさを兼ね備えていると思いました。前述のレーダーチャートで大きく劣っていた部分が大幅に改善されて、整った円に近付いたって感じです。良くなったのは間違いないのですが、それに伴って個性の部分が弱まってしまったようにも感じました。

たぶん世の中の大部分の人は、総合評価の高いものを好しとするのでしょう。我が家にはもう一台、ホンダの軽自動車がありますが、本当によく出来ています。荷物がたくさん載せられるように非常にスペース効率よくデザインされているし、走りもターボが付いてるお陰で高速道路で躊躇することなく追い越し車線に出ることができます。そして燃費も良い。日本の軽自動車の技術は、本当に素晴らしいと思います。でも残念ながらワクワクは感じないんですよね。これは車に求める価値観の違いですから、便利で快適ならばそれで十分なのですが、免許を取ったばかりの頃、車を運転することが楽しくて、毎日走らせていた40年以上前の記憶が、今も忘れられないだけなのかもしれません。

懐かしさを感じさせる New Car

アルファロメオの事を長々と書いてしまいましたが、結局何に乗り換える事にしたのかと言うと、またまたイタリア車。フィアット500(チンクエチェント)を選びました。この車に積まれているエンジンは、排気量875ccの直列2気筒でターボチャージャーで過給されます。2011年のインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど発表当初から非常に話題になっていたエンジンで、私もすごく興味がありました。アルファロメオが購入から5年目を迎え、2回目の車検を通して乗り続けるか、やめるかで悩んでいた時に車屋の店頭にちょこんと居たのが、青いチンクエチェントだったのです。2022年式の中古車ですが、すごく綺麗な車で、ナンバーが付いていたので即試乗が可能でした。「好きなだけ走らせて良いですよ」なんて言われてしまったので、一般道路だけでなく、ワインディングロードなども走らせてみたのですが、これがめっちゃ楽しい!
「うちに来る?」と聞いたら「うん!」と言ったので、我が家に迎えることにしました。(笑)

私が免許を取って最初に運転した車は、家にあった排気量360ccの空冷直列2気筒エンジンを搭載したホンダZという軽自動車でした。オートバイのエンジンを4輪車に載せたようなもので常用7000~1万回転という超高回転型エンジンで、トランスミッションはノンシンクロのドッグミッションだったので、ダブルクラッチを切らないと変速が出来ないという免許取りたての初心者には、とんでもなくハードルの高いものでした。ダブルクラッチなんて今どきの人にはわからないと思いますが、マニュアル車ではギアチェンジの際に左足でクラッチペダルを踏んで、シフトレバーを操作してからクラッチをつなぎますが、ダブルクラッチでは、シフトレバーを操作する前に2回クラッチを踏んでからでないとギアが入ってくれません。その後に改めてクラッチをつなぐという面倒な事をやらなければならないのです。特にシフトダウンの時は、ダブルクラッチを切りながらアクセルを踏んでエンジン回転数を合わせるという技も必要でした。オートマが当たり前の現代においては考えられないような車ですが、技術を身に着けることで車を自在に操れるようになると、こんな楽しい事はないのです。

フィアット500に試乗させてもらった時、40年以上前に乗っていたホンダZの事を思い出しました。どちらも2気筒エンジンなので、トコトコトコと振動しながら回るエンジンフィールが同じだと思いました。フィアットの方が現代の車だから適度に振動が抑えられていて大人の雰囲気ですが、加速する時の音や振動の感覚に思わず笑みがこぼれてしまうのと同時に懐かしさを覚えました。速さや静けさ、滑らかさ、そして経済性を追い求める現代の車たちの中で、フィアット500が与えてくれる「走らせる楽しさ」は、人と機械の程よい関係性を教えてくれているように思います。フィアット500のツインエアエンジンは、2023年で製造が終了してしまいました。現在は電気自動車の500eに代わっているようですが、さてさてどんな車なのでしょう。「楽しい」は有るのかな?

今回は車の話をしましたが、家も同じだと思います。性能や経済性といった評価も大切ですが、数値で表すことが出来ない「住み心地」という性能についても大切にして欲しいと思います。家に帰ると思わず笑みがこぼれてしまうなんて素敵じゃないですか?