合同会社サンシャイン・ラボ 代表の松原です。
今日は昔話をしようと思います。
2015年の話なので今から11年も前のことですが、南 雄三氏が書かれた「通風トレーニング」という本を読みました。

冒頭に「本書の目的」というページがあり、以下のように書かれています。
深い軒をもった夏の縁側で、風を感じながらスイカを食べる心地よさ…。
いまでは現実ではなく想像の域になってしまった日本の風景ですが、それでもわれわれ日本人は通風が好きで、どんなに冷房が当たり前になっても、通風を捨てようとはしません。
とはいえ、われわれは通風についてよく知っているのかといえば、情緒的に感じているだけで、科学的にはまるで理解していません。それが証拠に、家のデザインが変化する中で、通風に疎い設計が氾濫し、暑苦しく、空気が澱んでいる家が多くつくられています。
通風を勉強しようにも、専門書として編集された本は見当たりません。改正省エネ基準でも「通風」の項目はあっても、その評価方法は難しくて…。
そこで、誰にでも理解でき、しかも通風設計までの知識が得られる本をつくりたい…と思いました。
以下省略
このような目的に対してYKK AP(株)が持つ通風シミュレーションプログラムを用いて、目に見えにくい風の動きを解き明かした検証結果がまとめられています。
この本は「OMソーラー復活計画」でお世話になっている杉村さんから紹介されたものでした。
杉村さんは、この本を読んで、建物の側面を流れる風を「ウィンドキャッチャー」によって室内に取り入れられるようにしたいと考えられていて、私に「ウィンドキャッチャー」の設計を依頼されました。
間接風をつかむ
直接風は、窓を開けると直接入って来る風。間接風は、建物の側面を流れる風です。「通風トレーニング P90~P92」において以下のように説明されていますが、直接風に比べて、間接風の換気効果は1/20以下になってしまうのだけど、「ウィンドキャッチャー」を取付ける事により大きく改善を図る事ができるとあります。



「これをやってみたい!」というのが、杉村さんのご要望なのですが、「本書の目的」で南さんが書かれているように「風」については情緒的に感じているだけで、本当の動きというものを理解している訳ではありません。そこで通風シミュレーションのような流体の動きを解析するハイテクツールが登場してくる訳ですが、↓→↘↑←がいっぱい描かれた図を見せられて、どのように通風を暮らしに取り入れていけば良いのかを正しく説明できる人は、ほとんどいないように思います。

杉村さんも私も疑り深いので、シミュレーション結果を鵜呑みにすることができず、実体験をすることで通風に対する理解を深め、デジタル結果との整合性を図りたいと考えました。
通風実験
陽のまど部材の製造でお世話になっている(株)竜洋さんに場所をお借りして↓のような実験棟を屋内につくりました。1辺が2730mmの平面で高さ1890mmの小屋です。出入口のドア1ヵ所と2連の引き違いサッシが2面にあって、イ~ホの5か所にウィンドキャッチャーを想定したボードを取付けられるようにしました。



実験棟内は、風の動きを観察するために455mm間隔で天井から床まで張った糸に↓のようなピンクの吹き流しを取付けました。


風は大型のファン3台で実験棟の側面を流すようにしました。
このファンは、OMソーラー時代に棟換気金物の実験などで活躍していたものですが、OMソーラー退職時に「要らないから持って行っていい」と言われたので、自宅で保管していました。場所も取るのでどうしたものか?と思っていましたが、まさかこのような形で役立つとは思いませんでした。ただこの実験の後に3台中、2台が天に召されてしまったので、ここでお別れとなりましたが、よく私を助けてくれたと感謝しています。
11年前といえば私も50歳になるか、ならないかの頃なので、これらを一人で作り上げるだけのパワーが、まだありました。でも今「同じことをやれ」と言われたらお断りするかなぁ。
通風実験の様子については、これから連載でお伝えしようと思いますが、私たちが提案する「おいしい建築」を実現するためには「風を読む」ことは、とても重要なのです。特に夏の暑さ対策に通風は欠かせないので、風の動きをしっかり理解して適切な位置に窓を設ければ、エアコンだけに頼らなくても、そこそこ快適に過ごせる環境をつくることは出来るでしょう。ただし風も太陽と同じで人間の思い通りにはならないものですから、住まい手自身が風を感じて、積極的に窓を開けてくれなければ、通風シミュレーションのような風の流れは生まれません。ボタン操作1つで働いてくれるものとは違うのだという事も理解していただく必要があります。
風を知り、利用することは、太陽以上に厄介で、難しい… でも面白いものです。
昔話ではありますが、過去に私が経験した事が皆さんのお役に立つならば嬉しいなと思い、書いてみることにしました。







